春の扉 ~この手を離すとき~

「それとね、美桜に教えてあげたいことがあるの」

「なに? 」


智香への胸のつかえがとれてホッとしたわたしは、智香に寄り添ったまま眠れそうなぐらい安心していた。


「バレンタインの日ね、美桜と別れたあとに健太郎と公園で話をしてたんだよね」


そのときに健太郎くんはこれまでのことを智香に話したのかもしれない。
そして殴られちゃったのだろうけれど。


「よかった。最近の2人は怖いぐらいにギスギスしていたから、……それ聞いて安心した」

「私を都合よく利用してるだけなのよ、あいつは。困ったときほど泣きついてくるから」

「それだけ智香のことを頼りにしているんだよ」


健太郎くんが健太郎くんにとって本当に大切な人に。

早く“智香という存在”に気づいて欲しいなって心から思える。

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