春の扉 ~この手を離すとき~
おばあちゃんの家に帰ってきたわたしは、妙子おばさんへの挨拶も、お墓参りにも行かずにおばあちゃんの部屋にいた。
詩織が言っていた『あなたたち』と咲久也先生との繋がりがきっとどこかにあるはず。
引き出しやタンスの中、おばあちゃん宛の古い手紙や年賀状も一つ一つ細かく探してみたけれど何にも見つからなくて。
というか何を探していいのかも分からないけれど。
ときどき、やっぱり偶然だったのかもとか、詩織の勘違いだったのかもと思ったりもしたけれど。
でも何かが気にかかる。
一息ついて、窓からの景色に目をやった。
いつの間にか空は白くなっていて、朝がやってきたことを教えてくれた。
……あるとすれば、あとはこの部屋
あまり期待はできないけれど、おばあちゃんの部屋を諦めて、わたしの子供部屋の捜索にとりかかった。