春の扉 ~この手を離すとき~
クローゼットの中からアルバムを出してテーブルに積み重ね、そして幼稚園のときの似顔絵や工作が詰め込まれている箱を出しているときだった。
ひじが当たって側に積まれていた収納ボックスをひっくり返してしまい、わたしが着ていた子供服が散乱してしまった。
「あぁ、もうっ」
捜索を一時中断せざるを得ない。
大きくため息をついて子供服を寄せ集めると、畳むのは後回しにしてとりあえずボックスに詰め込みはじめた。
けれどどれもが懐かしい服ばかりで、時々その手が止まってしまう。
おばあちゃんに刺繍を施してもらったブラウスや、作ってもらったスカートをウエストにあてて、その細さに軽くショックをうけたり。
わたしこんなに小さかったんだと浸っていると、ちぐはぐなマフラーが出てきた。
子供用の桜色のマフラーと大人用の緑色のマフラーがきつく結んである、わざと長くしたマフラー。
それを見て思わず顔がほころんでしまう。