春の扉 ~この手を離すとき~

アルバムをめくると、次のページからは桜の花の写真やお花見の写真がたくさん続いていた。

確かこの年は桜が一段と美しく咲いたらしくて、たくさんの人が交互にやって来て、散り終わるまで1日もかかすことなくお花見をした記憶がある。



わたしはおばあちゃんに毎日違う柄のお着物を着せてもらって。
みんなから『桜の君』『美桜姫』と呼ばれて、お姫様になれたことを楽しんでいた。



そして、……1枚の写真に目がとまった。



桜吹雪の中、手をのばして花びらをつかもうとする幼いわたしの後ろ姿と、その横に立っている青年の後ろ姿。


その写真の側には


『美桜と咲久也君』


おばあちゃんの字でそう書いてある。




先生、……みつけたよ

わたし、先生をみつけたの



目を閉じると、そのときの光景がよみがえってくる。

広がる満開の桜と舞い散る花びら、そして風に揺れる木漏れ日がわたしたち包み込んでいて……。


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