春の扉 ~この手を離すとき~

わたしは震える指で中の便箋を取り出した。




――― 桜の君へ


美桜、ずっと隠していてごめん。
そして黙っていてごめんね。






いつものように『桜の君へ』ではじまっている手紙。


待って、これはどういうことなの?



だっていつもと同じ書き出しで
字だって同じで……



理解できずに、1度手紙から目を離すと桜の木を見上げた。


……あなたじゃないの?



でも桜の木は黙ったままで。


指だけの震えではおさまらなくなり、立っていられなくなったわたしは、雪の中にぺたんと座りこんでしまった。
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