春の扉 ~この手を離すとき~

同じ思い


「美桜ちゃんね?! 」


おばあちゃん家に入ろうとしていると、通りかかった妙子おばさんが驚いたように声をかけてきた。
買い物帰りらしく、買い物バッグからネギが見えている。

こんな平日にうろついていたら、さすがに妙子おばさんもびっくりするよね。


「……学校さぼっちゃった」

「そんなことしてっ。玉緒ちゃんは知らんのやね? 」


強い口調の妙子おばさん。
心配かけてしまったみたいで少し反省。
もっと心配かけてしまわないように、泣いていたことがばれませんように。


……それよりも


「おばさん? どうしてお母さんが知らないって分かったの? 」

「そりゃ電話がきとらんからよ」

「……電話ってなに? 」

「あ、ん、なんかねー? そんなこと言ったかね? 知らんねー」


明らかにしまったと言う顔をして動揺しているおばさん。
ここまで隠し下手な人って初めて見たかも。

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