春の扉 ~この手を離すとき~
「まぁ、それもあるかもしれんけどね。でも松子さんが亡くなったあとね、玉緒ちゃんは泣きながら何度もうちに電話をしてきてたんよ」
「……泣きながら? 」
「美桜ちゃんには少し酷かもしれんけど、……でも玉緒ちゃんの気持ち知っておきんさい」
わたしはうなずくと身を任せたまま、おばさんの胸の中で話の続きを待った。
「玉緒ちゃんね『美桜がお義母さんを求めて毎晩泣いてしまうし、ご飯の味が違うと言って食べてくれない』って落ち込んでいたんよ」
「……わたし? 」
あの人を苦しめていた原因はわたしだったの?
わたしを抱き寄せているおばさんの腕の力が、わずかに強くなった。
だからご飯も作ってくれなかったんだ。
わたしがおばあちゃんを求めてしまっていたから、あの人を苦しめていたんだ。
なのにわたしは……