春の扉 ~この手を離すとき~
「……ごめんなさい」
「そりゃずっと松子さんと暮らしていたんだから無理もないない。美桜ちゃんのせいじゃないね。でも今のその気持ちは玉緒ちゃんに伝えてあげんさいね」
「……うん」
妙子おばさんはわたしにニカーッと笑顔を見せると、側にあったティッシュペーパーでごしごしとわたしの涙をふいてくれた。
少し痛いけれど、その痛さに愛情を感じる。
「それとあんまり意地をはらんこと。そーゆーところはあんたたち母娘はそっくりやね」
「そっくり?」
初めてあの人に似ているって言われたかも。
なんでだろう。
少し恥ずかしいけれど、うれしいって思ってしまった。