春の扉 ~この手を離すとき~
「それよりその手紙は美桜ちゃんからあたしへね? 」
妙子おばさんは炬燵の上の手紙に視線を向けた。
というよりは、さっきから気になってはいた感じだけれど、『感謝の手紙なんかよりもお漬け物の方がいい』といった顔をしている。
「だめー。これはわたしがもらったの」
「ラブレターかね? おじさんもあたしに書いてくれんかねー」
期待してなさそうにケラケラと笑いだした妙子おばさん。
もしかして妙子おばさんは、咲久也先生のことを覚えているかな。