春の扉 ~この手を離すとき~

「咲久也先生ね、毎月おばあちゃんに会いに来てくれていたんだよ。このお手紙もね、いつもわたしに置いてくれていたの」

「まぁ、そうなんかね?! うちにも顔見せんさいって伝えんさい 」


妙子おばさんは驚いたように目を丸くしている。



「それとね『自分の人生を生きる』って言ってくれた」



わたしの言葉におばさんはうなずきながら満面の笑みを浮かべた。
それだけ思ってもらえてる人がいるってことを、咲久也先生に伝えてあげたい。



「美桜ちゃんは咲久也くんが好きなんね」

「うん。……分かる? 」


今は隠さずに素直に言える。


「分かる分かる。咲久也くんも同じ気持ちなんやね」

「……どうして先生の気持ちが分かるの? 」

「どうしてって、雛菊の花言葉知らんね? 」


そう言っておばさんは手紙に目線を送った。

先生がくれる封筒にはいつもデイジーの押花がついているけれど。

というか妙子おばさんが花言葉を知ってる方が驚きなんですけれど。

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