春の扉 ~この手を離すとき~
「“あなたと同じ思いです”って、そういう意味やね」
………あなたと同じ思い
おばあちゃんを亡くした悲しみ
その悲しみを握りしめて離すことができなかった苦しさ
そして、出会って惹かれあった心
わたしたちはあの日からずっと同じ思いを抱えて……。
「春の野に 永遠に美しき桜が咲く也」
おばさんはまた泣きはじめてしまったわたしの顔をゴシゴシとこすりながら、何かを詠んだ。
しかもドヤ顔で。
あまりにも柄に似合わないことだから、どうしたのかと心配になってくる。
「……どうしちゃったの? 」
「松子さんが美桜ちゃんと咲久也くんの名前を合わせた歌なんよ。二人が揃うと桜が喜んでいるって松子さんがよく言ってたね」
先生とわたしの名前で……。
そんなことを教えてもらうと、先生との出会いに運命を感じてしまいたくなってくる。