春の扉 ~この手を離すとき~

添う


―――― 2年後……



「美桜ー、本当に卒業パーティ行かないのー? 」

「うん、行かない。おばあちゃんに早く卒業証書を見せてあげたいの」


智香と健太郎くんのツーショットの記念写真を撮っていると、“逃がすまい”と文乃が腕に絡んできた。

けれどわたしはするりと抜けてみせた。


「相変わらずババコンだよなっ、いって! 」

「本当にいつまでたっても。もう少し言葉を選びなさいよっ」

「はいはい、すみません」


証書の入った筒で気だるそうに肩を叩いている健太郎くんを、わたしの代わりに智香がどついてくれた。


「……完全に尻に敷かれてるな」

「そんなんじゃないっ! 」
「そんなんじゃないわよっ! 」


純輔のつぶやきに、健太郎くんと智香は顔を真っ赤にして同時に怒りだした。


それを見て文乃と純輔は『息ぴったりの夫婦漫才』だとケタケタと笑いはじめ、わたしもつられて笑い出してしまった。

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