春の扉 ~この手を離すとき~
「おばあちゃん、無事に高校を卒業することができました」
満開の桜の木に卒業証書を広げるわたしに『おめでとう』と祝福してくれているかのように、そよ風が枝をゆらして、わたしの周りに桜の花びらを舞い降らしはじめた。
「ありがとう」
あれから桜の木には手紙が届くことはなかった。
今も、何もない。
分かりきっているのに小さなため息をひとつ。
この虚しさも慣れっこになっているはずなのに、どうしてもいつも淡い期待を持ってしまう自分をばかだなって思う。
“親友”と呼べる友達もできて、女子バスケ部のマネージャーにもなった。イベント毎には積極的に参加して、たくさんの思い出を作ったし。
そして、希望の大学にも合格することができて。
充実した高校生活を送れたと、胸を張って言えるけれど……