春の扉 ~この手を離すとき~
「昨日今日と美桜を見ているとね、心から笑ってはいないんだろうなって感じていたんだよね。作り笑顔がうまいというか、無理して楽しもうとしているなって思ってね」
ほとんど初対面で、それに会話をするのは初めてなのに、わたしの何を理解してそういう風に言ってくるのだろう。
分かった風に決めつけて話してくる。
まるで健太郎くんやあの人みたい。
咲久也先生も、わたしのすごく苦手なタイプかもしれない。
でもこのままだと雰囲気が悪くなってしまいそうで。
それはそれで面倒くさいし。
「……そんなことないですよ? 」
この空気を入れ替えようと、笑顔を作りながら首を振ってみた。
……なのに
「そういうところだよ」
先生はピシャリとわたしに言い切った。