春の扉 ~この手を離すとき~
「でもいい感じに見えたけどな」
智香に向けた話しに割り込んでくる健太郎くんの言い方に、やっぱりトゲがある。
まるでわたしが浮気をしたんじゃないかって疑われているような気分。
わたしにとってはまだ友達にもなっていないのに、健太郎くんはすでに彼氏きどり。
どんどんこの関係が面倒くさくなってきてしまう。
「健太郎くん、さっきから何が言いたいの? 」
いっそこのまま誤解してもらって、健太郎くんから別れを切り出してくれたらいいのにって期待さえしてしまう。
「ほらほら健太郎、もういいでしょ? 」
険悪になり始めているわたしたちの会話に、智香が無理に入り込んできた。