春の扉 ~この手を離すとき~
ここならテナント数も品揃えも豊富だから、なにかしら喜ばれるものが見つかるはず。
クリスマスが近いせいもあって、どのお店もクリスマスの装飾に力を入れているけれど、お店によって派手だったり、きらびやかだったり、シックな飾りつけだったりと雰囲気も様々だった。
ぶらりぶらりと歩いて目を引くお店に入るだけでも楽しいし、1人では敷居の高すぎる高級なアクセサリー店も、2人だと平気で入れるし。
……でも。
「見て、このブレスレットすごく素敵」
「美桜に似合いそうだけれど、……値段。0のケタが1つ多い気がする」
なんて、高校生では手の届かない現実を目の当たりにしてしまうこともあるけれど。
つい健太郎くんへのプレゼントを選びにきたのを忘れてしまい、気がつけば1時間以上も散策してしまっていた。
こんなことじゃだめ。
真面目に決めないといつまでたっても肩の荷が下りない。
心を入れ替えたわたしは、試着していたニット帽を棚に戻すと、プレゼントを選んで欲しくて智香を頼るように見つめてみた。