春の扉 ~この手を離すとき~
「健太郎のよろこびそうなものねぇ。あいつは美桜からのプレゼントなら何でもよろこびそうだけれど? 」
「それじゃ困るの。好きな色とか趣味とか全然知らないし」
「は? ……うそでしょ? そんな話もしてないわけ? 」
あきれられても仕方がないよね。
健太郎くんには悪いけれど、興味がないというか知るつもりもなかった。
多分、電話で話したときなんかに言ってくれているんだろうけれど、自慢話が多くてうんざりしてしまって、早く切ってくれないかな的に話を聞いているだけだったし。
「んー、リストバンドを新しくしたいとか言っていたけど安すぎるし、バスケットシューズは高いよねぇ」
「……身につけるものはちょっと」
「どうして? 付き合ってるんならそーゆーものじゃないの? “いつでも一緒”みたいな」
『そう思われてしまうのが嫌なんだけれど』
とは健太郎くんと仲のよい智香には言いにくい。