春の扉 ~この手を離すとき~

そんなわたしを、手の中からサンタクロースの黒猫が何か言いたげに見つめている。


『そういうところだよ』


きっとそう言いたいんだろうな。
先生の言葉は、まだ心に突き刺さったままみたい。



「そういえばあいつ、インディーズバンドのCDが欲しいって言ってたよ。タイトル分からないけれどジャケットを見れば分かるし」


智香が黙りこんでしまったわたしを気づかってくれている。
智香をそんな気持ちにさせてしまったことが申し訳なくなってくる。



「じゃあ、それにしよっかな」


わたしは明るく答えると、黒猫のサンタクロースをレジに連れ行った。












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