春の扉 ~この手を離すとき~

智香の教えてくれたCDを買うと、少しだけ肩の荷が降りた気がした。


「ありがとね。これで健太郎くんよろこんでくれるよね」

「絶対に間違いないよ」


楽しそうに笑ってみるわたしに、智香は自信ありげに笑い返してくれた。


うん、やっぱりこれでいいのかもしれない。
わたしが合わせておけばみんなが楽しいんだから。


「あ、ちょっとだけここのお店によってもいい? 」


わたしはお気に入りの雑貨屋の前で足を止めた。


小さなショーウィンドウは他のテナントと同じように、クリスマスの小物やガーランドで飾られている。

お店の中も至るところにクリスマス商品が並べてあり、わたしは目で楽しみながら、いつものように便箋やメッセージカードが並べてあるコーナーへと向かった。

このコーナーも時期的に、クリスマスカードで大半が占めている。
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