春の扉 ~この手を離すとき~

雑貨をいろいろと見ながら遅れてやってきた智香は、わたしが3つ並べて選別しているカードを除きこんできて、固まってしまった。


「……まさかと思うけれど、健太郎なんかにメッセージカードを贈るつもり?」

「え? ……まさか」



わたしの苦笑いに合わせて、智香も笑いはじめた。

健太郎くんにメッセージカードを贈るなんてことは考えてもいなかったし、贈るとしても何を書いていいのか……


「だよね。あいつにこんなオシャレなものあげても猫に小判だよ」


さすがにそこまでは思わなかったけれど。


智香は右側の“サンタとトナカイのイラスト”が書かれたカードを手に取ると、首をかしげながら元の位置に戻した。

これじゃダメってことみたい。


「相手のイメージは分からないけれど、美桜のイメージならこれだなー」


智香は今度は左側の雪の結晶が控えめにちりばめられた淡い桜色のカードを手に取った。


「よかった。わたしもそれかなって思っていたの」


こんな些細なことでも意見が合うとうれしいし、少しホッとする。
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