春の扉 ~この手を離すとき~
温度差
終業式も終わり、明日からやっと待ちに待った冬休みに入る日。
文乃と純輔はまたツリーを見に行くと言って、さっさと帰って行ってしまった。
2人を見送ったあとにトイレから教室に戻ってくると、智香の姿がない。
さっきまで確かに健太郎くんといたはずなのに。
嫌な予感しかしないけれど、とりあえずわたしは、わたしの席に座っている健太郎くんにたずねてみた。
「智香は? 」
「用があるから先に帰るってさ」
「そうなんだ。遅くなってごめんね」
……やっぱり
健太郎くんと2人きりにさせるために、智香が変に気をきかせたんだと思う。
二人だけの帰り道のことを考えると心がずーんと重くなりだした。
「じゃ、帰ろうぜ」
「うん」
笑顔の健太郎くんに、わたしは作り笑顔を返した。
プレゼントを渡したら何か理由をつけてすぐに帰ろう。