春の扉 ~この手を離すとき~
やっぱりこのまま付き合っていれば健太郎くんを傷つけ続けるだけ。
きちんと『お付き合いできない』と言わなきゃ。
文乃たちにもきちんと話そう。
分かってもらえなかったら、それはもう仕方のないことだと思うしかない。
「あのね、 少し話したいことがあるんだけれど……」
「なになに?」
わたしの提案だけでうれしそうな顔をする健太郎くん。
そんな顔をされるとますます心苦しくなってしまう。
「……えっと、」
こんな道の真ん中で、それに立ち話で話すようなことじゃない。
どこか場所がないかなと辺りをキョロキョロと探すけれど、近くに落ち着いて話せるような場所が見当たらない。
「よし、じゃ公園でも行こうぜ! な、決まり!」
そう言った健太郎くんはわたしの手を持つと、前を見て歩きはじめた。
……どうしよう
『離して』
と言いたいけれど、そんなことをすれば傷つけてしまうかもしれない。
そう思うと、この手をどうしていいのか分からない。