春の扉 ~この手を離すとき~

「わたしからは、……これ。もう持っていたらごめんね? 」


わたしは健太郎くんからのプレゼントを開けずに、カバンから智香が選んでくれたCDを取り出した。
赤い袋に入っていて、緑色のリボンがついているクリスマスプレゼント感が丸出しのラッピング。


「なになに? ……まじで用意してくれてたのか?! 」


健太郎くんはうれしそうにラッピングをはずすと、興奮したようによろこびはじめた。


「うそだろっ! これ、すっげー欲しかったやつじゃん」

「よろこんでもらえてよかった。実はね智香に教え、」

「俺、一生大事にするからっ」

「そんな、大袈裟だよ」


こんなによろこんでもらえるなんて思いもしなかったし、はしゃぐ健太郎くんが子供みたいで可愛らしく見えた。

幼なじみの智香に相談して正解だった。

と思う反面、こんなにうれしそうな笑顔を見せられてしまうと、完全に別れ話を切り出すタイミングが無くなってしまった。

わたしが戸惑っているあいだに、健太郎くんのはしゃぐ声は少しずつフェードアウトしていき、そしてわたしたちは無言になった。

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