ThEy'Re SEVeN ;
男と女は立っていた。
男は壮年で、女は若い。
見渡す限りの草原の中。
気付けば二人で立っていた。
「……」
「えっと…?」
上手く頭が働かない。
だが二人は夫婦でもなんでもない事を知っている。
着ている服は整っていた。
だが持ち物は何も無い。
否、一つだけ……お互いたった一つだけ持っていた。
それは自分の心の中に。
ひとたび念じれば手の平に。
そう、それは形の無いモノ。
現に手の平に現れるわけでもない。
「こんなモノ持ちたくないがな」
「わたしだって。疲れるもの」
けれど二人は感じていた。
唯一つのそれ。
草原に二人。
草が足元をなぜていく。
それを男は不快に思い、女はそんな男を不快に思う。
しかしそれが互いの持っているモノ。
それを実感したその時、摩耗していた記憶を理解する。
「……ああ」
「行きましょう……」
もうみんな待っているだろう。
この草原を抜けて。
南に微かに見える、あの街へ。
「まったく、この私が歩きとは……」
「貴方いつもノリモノですからね。こんな時くらいいいでしょう」
――――『ira』『invidia』