スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「わたしね、自分で思ってる以上に、プライド高いみたい。加納の人形でいられなかったんだよね。悔しくてさ。その悔しさに気付くまで時間がかかった鈍感だけど。
プレゼントされたブランドのもの全部突き返して別れて、後悔や未練は全然ないの」
だから、今この胸でくすぶってる何かの正体は、惚れた腫れたの色恋絡みじゃないんだってハッキリ言える。
わたしが加納と再会して動けなくなったのは、純粋に、恐怖を感じたからだ。
厨房から俊くんが出てきた。
手にした大きなお盆には、わたしと頼利さんのぶんの夕食が載っている。
「お待たせしました」
海鮮の切れっぱしのまぜまぜ丼。
わさび醤油とアボカドが海鮮とよく合ってて、わたしの大好きなメニューのひとつ。
あっという間にこんなおいしいものを作れる俊くんはすごいと思う。
「いただきます」
俊くんを見上げて手を合わせたら、俊くんは白い歯を見せて笑って、靴は脱がないまま座敷の縁に腰掛けた。