スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「ごめん、俊くん」
ごはんを食べながら、俊くんと美香子先生に、らみちゃんの家庭事情と今日のジャズのライヴのこと、ライヴハウスを出たところで加納と鉢合わせしたことを話した。
わたしがメインでしゃべって、頼利さんは補足や訂正を入れる。
「違ぇだろ。鉢合わせしたんじゃなくて、待ち伏せされてたんだ。
そっちの先生は『老舗のジャズのライヴハウス』としか言わなかったんだろうが、ジャズだけやってる古いライヴハウスなんて、このへんじゃデュークしかない。簡単に場所がつかめたってわけだ」
美香子先生の、お酒にほてっていたはずの頬は、今は血の気が引いてしまっている。
「ごめんね、なぎさ先生。余計なことを言ってしまって」
「気にしないで。わたしだって、加納がいきなり現れてパニックになるって、自分でも想像してなかったし。
んー、でも、保健室の美香子先生は心のケアも専門だよね。1回まじめに話しておけばよかったかな」
「恋の暴露話なんて、したことなかったものね。そもそも、わたしたち、恋というものの優先順位が低いから。
出会いがないって嘆くポーズだけ取りながら、実際のところは今の日常生活がいちばん心地よくて、積極的に恋に踏み込もうって思えなくて」
だから少し驚いた、と美香子先生は言った。
トラウマになるような恋愛経験がわたしにあることが、意外だったんだ。