スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「送り狼になるためだって言ったらどうする?」
美香子先生のマンションからわたしの家まで、バス停2つぶんの距離だ。
普段だったら当然歩くんだけど、今はちょっと怖い。
帰りはバスを利用することにして、わたしは美香子先生のマンションを出た。
時刻はまだ午後9時にも届かない。
昨日の夜が遅かったから今日は早めに寝ようってことで、サクッと解散した。
マンションとバス停は、目と鼻の先だ。
外灯が明るく照らすベンチに腰掛けて、3分後に来るはずのバスを待つ。
美香子先生からは、タクシーを呼ぼうか訊かれたけど、バスで大丈夫って断った。
だって、この時間帯、バス通りには車も人もそこそこ多い。
遅くまで開いてるスーパーと24時間営業の定食屋が、バス停から見える範囲にある。
バス停で待っているのは、わたしひとりだ。
スマホを眺めて時間つぶししようかと、通勤バッグに手を突っ込んだときだった。
「あ、なぎちゃん……」
聞き慣れた声に呼ばれて、ハッと振り返る。
わいわいした男の人の声が近付いてくるとは思ってたけど。
「俊くん。サッカーの帰り?」
「う、うん」
スポーツウェア姿の俊くんは、同じウェアの男の人たちと一緒だった。
首にはタオルを引っ掛けて、手にはスパイクの入った袋とサッカーボールがある。