スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
俊くんが所属する地域のサッカーチームは、木曜の夜と土曜の午前中に練習している。
木曜は飛梅の定休日だから俊くんにとってちょうどよくて、このチームに入ることにしたらしい。
上は50代のメンバーもいるのに意外と本格的で、市大会ではいつも上位だ。
気さくに挨拶してくれるチームメイトの皆さんと、わたしは何度も試合会場や飛梅で顔を合わせていて、中には喜多小の保護者さんもいる。
わたしはベンチを立って皆さんに挨拶して、それじゃあまた、と手を振り合った。
黙っていた俊くんが、隣で一緒に立ち止まったままの10代のフリーターくんに、サッカーボールを押し付けた。
「ごめん、先に行ってて。すぐ合流するから」
「え、何事すか?」
「後で話す。とにかく、先に行けって」
「うっす」
フリーターくんは、とっくに先に行ってた皆さんのほうへと、小走りで去っていった。
彼らが横断歩道を渡って、話し声が聞こえなくなると、俊くんの顔に疲れた色が浮かんだ。
俊くんは肩を落としながら、大きく息をつく。
わたしはベンチに腰を下ろした。
「どしたの、俊くん? 何かわたしに言いたいこと、あるの?」