スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
俊くんはベンチのそばに立ち尽くしている。
チラリと見上げてみたら、俊くんは硬い表情でうつむいていた。
子どものころみたいに泣き出してしまうじゃないかと思って、胸がざわつく。
短い沈黙を挟んで、俊くんはうつむいたまま、ささやくような声を吐き出した。
「昨日はごめん。ただでさえ、なぎちゃんは混乱してたのに、おれがますます引っ掻き回した」
「わたしは大丈夫だよ。俊くんこそ、ちゃんと眠れた?」
俊くんは、かぶりを振った。
短い髪から汗が落ちるのが見えた。
少し湿った6月の夜は、わたしにはちょうどいい気候だけど、動いたばかりの俊くんには暑いんだろう。
「今日、サッカー、全然だった。眠れなかったせいもあって、集中力がガタガタで、ミスばっかりで。
情けないよな。いつかこんな日が来るって、わかってたのに。覚悟できてるはずだったのに」
「こんな日って?」
「なぎちゃんにふられる日。
なぎちゃんがおれのことを男として見てないのは、ずっと前からわかってた。この関係が変わらないこともわかってた。
おれが何も変えようとしてなかったから」