スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「俊くんって、どうしようもないね。一時期、すごく遊んでるイメージだったんだよ。実は全然そうじゃなかったんだって、もう、ほんと、どうしようもない」
「自分でもそう思う。臆病が染み付いてしまって、これからどうすればいいか、わからない」
「次の恋愛に踏み出せそうにないってこと?」
「恋愛の仕方が全然わからない。知らないっていうほうが正しいか。
この年でこんなこと言うの、情けないしカッコ悪いよな。外見からはそこそこ女慣れしてそうってイメージを持たれることが多いから、ますます困る」
わたしの家のほうへ向かうバスが来て、ドアが開いた。
乗らないの、と俊くんに訊かれて、わたしはかぶりを振る。
まだ話の途中だ。
あと15分したら次のバスが来るんだし、この便に乗る必要はない。
誰も乗らず、降りないバスが、しずしずと去っていく。
「ねえ、俊くん。やけにならないでね」
「何それ? なぎちゃんに言われたくない」
「じゃあ、誰に言われたら素直に聞くの?」
俊くんは答えない。
沈黙に、バス通りを走る車の音が少し騒々しい。
俊くんは不意にしゃがみ込んで、うなだれて、しばらく無言だった。