スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
いつの間にか広くなっていた俊くんの背中に、急に気付いて驚いたことがある。
ずっとずっと前、大学生のころだ。
加納と行った花火大会の帰り、慣れない下駄が痛いのを我慢し続けていたせいで、ひとりになった最寄り駅から1歩も進めなくなっていた。
俊くんが偶然、見付けてくれた。
しょうがないなって笑ってバイクを取りに行く背中が、すごく広かった。
あのころよりもまた広くなっている背中に、サッカーで走り回った後の汗が透けている。
もうとっくに大人の男なのにね。
しかも、しっかり者でカッコいいのに。
わたしはどうして俊くんに恋をしないんだろう?
俊くんが、低く笑った。
「なぎちゃんって、いつもおれの図星を指すよな。やけになってやろうかって、昨日の晩、眠れないまま考えてた。風俗にでも行ってやろうかって」
「やめてよ」
「行かないよ。美香子先生からおでこにキスされただけで、心臓が破裂するかと思った。こんなおれが、それ以上のことをできるわけがない。
もっと若ければ、勢いでどうにかできただろうけど」
「26でしょ。十分若いよ」