スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「社会人12年目だ。中学出てすぐ、働きながら調理師学校に通ってたんだから。
同級生としゃべってても、自分だけ老成してるのをひしひしと感じる。年齢相応の若さがないんだよ、おれ」
「こら、あきらめるな。若返れ。失った青春を取り戻すのは、いくつになってからでも遅くないんだよ」
俊くんは小さく笑って、ひょいと立ち上がった。
ベンチに座るわたしの正面に来て、久しぶりにまっすぐにわたしを見る。
「ひとつだけ、わがまま言わせてほしい。これを最後に、なぎちゃんのこと、本当にあきらめるから」
「わがまま? 何?」
「抱きしめさせて」
その言葉が耳に届いた瞬間には、もう、ふわりと体温に包まれていた。
昔から知ってる俊くんの匂いに、汗の匂いが混じっている。
抱きしめると言ったくせに、俊くんの両腕には、そっとわたしの体に触れる程度の力しか加えられていなかった。
覆いかぶさるような体勢で、ほんの3秒。
俊くんの体が離れていく。
俊くんは、わたしから顔を背けて、それじゃあとつぶやいた。
そして、サッカーチームの仲間たちが去っていったほうへと駆け出した。