スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


☆.。.:*・゜


少しの間、ぼんやりしていた。

気付いたら、バスではなく四駆が、わたしの目の前に停まっていた。

助手席の窓が下がって、運転席から身を乗り出したドライバーが軽く手を挙げた。


「よう、先生。バス待ってるなら、乗ってかねぇか?」


「上條さん。お仕事か何かですか?」


「いや、らみを迎えに行く途中だったんだが、あんたの姿が見えてな。家の前まで送るから乗れよ」


頼利さんは助手席のドアを開けた。

わたしは戸惑いながら、バス停のベンチを立って、頼利さんの車に乗り込んだ。


「失礼します。でも、らみちゃんのお迎えの時間、大丈夫なんですか?」


「夜10時までには迎えに行くとしか言ってねぇから、そのへんは融通が利く。あんたを送ってからでも問題ない」


ゆっくりと車が発進する。バス通りの景色が、ゆるゆると後ろへ流れていく。


「お迎えって、そもそもどこに?」


「WJOの連中と飯食いに行って、そのまま連中が泊まってるホテルで遊んでる。トランプで盛り上がってるらしい」


ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラの皆さんは、今日と明日は完全オフで、明後日は移動日、そこからは怒涛の公演ラッシュとなるんだそうだ。


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