スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「官僚って暇なのか? 3日に1度は長文の日記をつけて、文科省の政策だの日本の教育の現状だのを語ってる。
休日にはしょっちゅう出掛けてて、自転車、マラソン、スキューバダイビング、クラシック音楽のコンサートに、有名フレンチでのディナーだと」
「秘書みたいな人がいて、口述筆記してくれるんですよ。だから、まめに長文の日記を更新できるんです。
旅行の写真も秘書が同行してて、プロ級の写真を撮るんですよね。充実したセレブって感じの写真だったでしょ?」
「吐き気がした。ああいう自慢ったらしいSNSがいちばん嫌いだ。あんた、よくあんな男と付き合ってられたな」
運転する頼利さんの横顔は、うんざりしたように歪んでいる。
わたしは何も答えられない。
だって、セレブ、いいじゃん。
あのプロ級のキラキラした写真の中に自分も写り込むって、すごい優越感だったんだ。
加納が連れていってくれる場所は洗練されていて、あるいは本当にきれいな自然たっぷりで、わたしみたいな凡人は毎度あっさりと酔い痴れた。
加納のSNSを見たら、何でこの人を手放してしまったんだろうと、わたしは後悔するんだろうか。
もしかして、ある程度大人になった今なら、本音と建前を使い分けて、加納との復縁もできてしまうんだろうか。