スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「えっと」
「さっさと注文しろよ。もうすぐ始まる」
何ですか、その失礼きわまりない口の利き方?
小学生の前で、それやりますか?
にらんでやろうと思ったら、相変わらずの流し目がキマりすぎてて、怒りのまなざしが空中分解した。
小学生相手なら、どんな美少年でも耐性あるし絶対煙に巻かれないのに、くぅぅ。
「ス、スクリュードライバーのウォッカ抜きでっ」
とっさに、いつもどおりの注文をしてしまう。
しまったと思ったときには、すでに遅し。
ブハッ、とイケメンは派手に噴き出した。
「要するに、オレンジジュースだろ。それをスクリュードライバーからウォッカ抜けとか、すっげぇ注文だな。ああ、これ誉めてっからな、先生。おもしれぇ人だ」
「ああそうですか、それはどうも」
注文を取ったウェイトレスさんも、かわいらしく笑いながら立ち去っていく。
ああもう、別にウケを狙ったわけじゃなくて、単なるいつもの癖なのに。
いや、とにもかくにも、わたしが果たすべきは、らみちゃんの担任としての責務だ。
このライリとかいうイケメン、何者?
どうしてらみちゃんをこんなライヴハウスに連れてきてるの?
問い詰めなきゃいけない。
顔やら声やらにごまかされてる場合じゃない。
「改めてお尋ねしますが、あなたは……」
出かかった言葉を、わたしは呑み込んだ。
会場の照明が落とされて、ステージだけに明かりが集められた。
ざわついていた客席が一瞬しんとして、それから拍手が沸いた。
ライヴが始まるんだ。