スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「勝手なことしてんじゃねぇよ」
らみちゃんの声に呼ばれてハッとして、わたしは息を吹き返した。
急速に晴れる視界、ぐらりと傾く世界。
コーヒーカップとシュガーポットに肩口から突っ込みながら。
ガラスが落ちて割れる音。
次に落ちるのは、わたし。
衝撃は来なかった。
「ったく。危ねぇな」
わたしは、硬い床の上にも砕けたガラスの中にも倒れ込まなかった。
温かく頼もしい腕がわたしを抱き留めて、力強く引き寄せる。
平衡感覚が戻ったとき、わたしは、片膝を突いた頼利さんに抱きかかえられていた。
「え……あの、ど、どういうこと……?」
「勝手なことしてんじゃねぇよ。何で黙ってた?」
「へっ? えっ!?」
ひょいと持ち上げられて、立たされる。
頼利さんは、割れたガラスを軽くまたいで、壁際に置かれたわたしのバッグを取った。
何でもなげに、席を離れて歩き出す。
「帰るぜ、先生」
半端に手を差し出した形のまま固まっていた加納が、我に返って椅子を蹴った。
「何なんだ、きみは!? 彼女は、ぼくと話をしていたんだぞ。重要な話の途中だったんだ。邪魔をしないでくれ」