スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
わたしのバッグを肩に引っ掛けた頼利さんが、横顔だけで振り返る。
「楽しいおしゃべりなら邪魔しなかったさ。どうやらそうじゃないらしいってのが、店の外からでも見えてたんだよ」
「何を言っている? 彼女のバッグを返せ。きみも、そこに立ち尽くしていないで座るといい。コーヒーは新しいものを持ってこさせよう。さあ」
加納がわたしに手を伸ばす。
それを打ち払ったのは、らみちゃんだった。
牙を剥くように怒った顔で、まっすぐに加納をにらんでいる。
彫刻みたいな加納の顔が、怒りにわなないた。
色の薄い目が残虐なほどに光って、らみちゃんを見下ろす。
打たれた手を軽く振る仕草が、ひどく危険な気配を孕んでいる。
ゾワッと、わたしの背筋に寒気が走った。
脚が震えて、ふらつきかける。
ダメだ、加納を怒らせちゃダメ。
悪いのは加納じゃない、悪いのはいつだってわたしなんだから。
「お嬢さん、そこをどきなさい。大人が大事な話をしているときに邪魔をするのは、悪い子のすることだ」