スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「他人と同じじゃおもしろくねえ。自分だけの口癖が多いほどカッコいい。個性をぶちまけるのに、ジャズほど適した言語はねぇよ。
まあ、訛りのきつい言語だ。合う合わないはあるだろうが、あんたは気に入ってるみたいだし、試してみるのもありだと思うぜ」
「訛り? って、どういう意味ですか? 楽譜を読むとき、メトロノーム的に拍を刻まずに、わざと揺らいだリズムにするっていう癖のこと?」
「ああ、まさにそれだ。スウィングっていうんだ……と、言ってるうちに到着だな」
「え?」
頼利さんは車を停めた。
喜多町商店街の隅にある駐車場だ。
促されて車を降りながら、わたしには意味がよくわからない。
「先生、ジャズで語ってみたいんだろ?」
「は、え、ああ、はい」
「教えてやるよ。おれの店に来な」
頼利さんは、いたずらをたくらむやんちゃな小学生みたいに、楽しそうに笑った。