スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
第7章 スウィングしなけりゃ意味がない!
「ほら、ドラムとピアノって似てるだろ?」
頼利さんが店長を務める楽器店は、地下にスタジオを併設しているらしい。
裏口からお店に入ったら、バイトのイケメン音大生さんが閉店処理をしている最中だった。
彼はわたしに愛想よく挨拶してくれて、頼利さんにはニヤニヤ顔を向ける。
「店長、らみちゃんとデートだったんじゃないんですか? なに乗り替えてんですか」
「予定が変わった。ジャズのレッスンが入っちまってな」
「とか何とか言って、スタジオでいかがわしいことしないでくださいよ?」
「生意気を抜かすな、この野郎」
部活の先輩後輩みたいに仲良くじゃれてから、バイトさんはレジ金がどうのこうのと、少し声を潜めた。
頼利さんは、レジ台の引き出しから鍵を出して、わたしに放った。
「先にスタジオに入っててくれ。電子ピアノしかないが、適当に弾いててくれていい」
「あ、はい、わかりました」
地下のスタジオは、想像していたより広かった。
教室半分くらいのサイズはある。電子ピアノとドラムセットが1台ずつと、アンプが合計6台。
電子ピアノのそばの丸椅子にバッグを置いて、スマホを取り出してみる。圏外だった。
車に乗ってる間にキャッチしたメールと電話の履歴が並んでて、もちろん全部、加納からだ。
わたしはそれらをチェックしないまま、スマホの電源を切った。