スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「イギリスがほかのヨーロッパの国々と戦争をして、その費用のために植民地アメリカから徴収する税金を高くしたんですよね。
不満が募ったアメリカで本国からの独立を望む戦争が起こって、その結果、見事に独立に成功した。そんな感じでしたっけ?」
「ああ、そのとおりだ。アメリカという国は自由を得たが、国内は決して平等じゃなかった。
白人が黒人を酷使する構造は、アメリカ独立の18世紀末以降も変わらず、南北戦争が終結する1865年まで、社会制度として残り続ける。
ジャズは、黒人奴隷の中から生まれた」
ワークソング、というものがあるそうだ。
直訳すれば、労働歌。
畑を耕したり、杭を打ったり、重いものを引いたり、綿花を摘んだり、そういう労働の動作に合わせて、みんなで歌う。
その歌を、ワークソングと呼ぶ。
黒人奴隷の故郷であるアフリカでは、歌とリズム楽器が民族音楽の根幹だ。
そこにルーツを持つワークソングも、例えば杭を打つリズムを伴奏として、片言の英語で望郷の思いを歌うような、そんな音楽だったという。
「ジャズってな、ボトムアップの音楽なんだ。奴隷っていう底辺から、のし上がった音楽。
南北戦争で負けた南軍が資金繰りのために売っ払った楽器を、黒人たちが手にした。
そこから発展していった音楽のひとつが、ジャズだった」