スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
第8章 ここから始まるラブストーリー
「おれとなぎさの関係くらい想像つくだろ」
駅前の喫茶店は深夜1時まで営業している。
大学時代、加納と別れ話をしていたころ、何度も閉店まで居座った。
それを覚えてないわけじゃないだろうに、加納は、縁起が悪いはずのこのお店でわたしを待っていた。
「途切れた場所から再開するのもいいと思ってね」
一言目に、加納はここで待つ意味を述べたけれど、動揺は隠し切れていない。
わたしと頼利さんの間で、チラチラとせわしなく視線をさまよわせている。
このお店、以前とは雰囲気が変わった。
古めかしかったメニューが今どきなレイアウトになってるし、文字だけじゃなく写真も添えられて、全体的に値上げしてる。
店内のあちこちにお花が飾られて、BGMも軽やかなポール・モーリアだ。
昔は重々しいオペラ曲だった。
冷静にあれこれ観察できるわたしは、加納を前にして、少しも震えていない。
加納と向かい合って座るわたしの隣に、頼利さんが座ってくれているからだ。
注文したアイスティーが2つ、一瞬で運ばれてきた。
ミルクもシロップも入れず、とにかく喉の渇きを癒やすわたしに、加納が苛立ちのにじむ声をぶつけた。
「なぜひとりで来なかった? こちらは?」