スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
加納が頼利さんの名刺を押しのけながら、頬がひくつくほどの苛立ちを、笑顔の下に隠そうとして失敗している。
ごちゃ混ぜの表情はひどく人間っぽくて、それ以上に安っぽい。
「きみが彼女の恋人だとでも言いたいのか? 嘘をつくな。彼女が誰とも交際していないと、学校関係者から確認は取ってあるぞ」
「ほう? おれのことは内緒なのか、なぎさ?」
これは打ち合わせにあったセリフだ。
打ち合わせになくても、小学校の先生としては模範解答があるわけで。
「子どもたちは繊細なの。教師の色恋沙汰を不用意に目に触れさせると、傷付けてしまうかもしれない。
恋は結婚というハッピーエンドで終わるものだと、子どもたちは信じてるから、中途半端な段階では公表できない」
「慎重だよな。おれは絶対、離すつもりねぇぞ」
「って、さり気なく肩抱こうとしないで。ここ、喜多小の校区から近いんだから、どこに目撃者がいるかわからないんだってば」
けっこう本気で焦ってます。
だって、加納に対して説明してる以上に、ほんとのところはヤバい。
頼利さんは期間限定とはいえ、担任中の教え子の保護者さんなんだから。
教師と保護者がどーのこーのってスキャンダルは、かなり最低だ。