スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


ふざけんなよ、勘違い野郎!

とまでは言わないけど、ああダメだなって、心の底からガッカリした。

根本的に価値観が違う。

話し合ってわかり合える相手じゃないんだ。


「わたしは、あなたと付き合っている間、楽しくありませんでした」


「楽しく、なかった?」


「はい。楽しいかどうかって、わたしの中ではとても大事な価値基準なのに、あなたといても楽しくなかったんです。

わたしは、一緒にいて楽しい人のとばで過ごしたいし、暮らしたいし、生きていきたいと思ってます」


その相手が頼利さんかどうか、まだよくわからない。

でも、少なくとも加納じゃないんだってことは、今この場でハッキリ宣言する。


「か、考え直せ。一瞬の享楽のために人生の大事な選択を誤るのは、愚か者のすることだ」


「一瞬をずっとつないでいけば、ずっと楽しくいられます。ずっとつないでいく工夫と努力を、わたしは大事にしていきたいんです」


「なぜ? どうしてぼくじゃないんだ? ぼくの何が劣っているというんだ?」


この人なりに工夫して努力して生きてるんだと思う。

誰よりも優秀な成績を取れるように、誰よりも目を引く秀麗さを維持できるように、頑張ってるんだろうけど。


「ごめんなさい。能力や容姿や地位や財産みたいな、目に見えて数字で表せるような基準の話じゃないんです」


「どういう意味だ?」


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