スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「あ。いらっしゃい」
「俊くん、まかない丼でいいから、2人ぶんの食べ物ください」
「何でもあるよ。まだ火は落としてないし」
「ん、とにかく早いのがいい。おなか減ってる」
わたしはカウンター席の美香子先生の隣に腰を下ろした。
頼利さんは、美香子先生とは反対側の、わたしの隣。
お冷とおしぼりを出してくれた俊くんが、あからさまに、わたしから目をそらした。
「2人で、どこで何やってたの?」
「へ? えっと、加納問題の解決とか」
「それって……どういう手段で?」
俊くんの口調は歯切れが悪い。
わたしが質問の意図をつかめずにいたら、美香子先生が、ちょんとわたしの肩をつついた。
「なぎさ先生、こっち向いて」
美香子先生の細い指が、わたしのポロシャツの襟元に触れて、下ろしっぱなしだったジッパーを上げた。
ああ……なるほど……。
「俊くん、美香子先生、誤解しないでね。これは全然そういう意味じゃなくてね、疑われるようなことはないとは言わないけど問題になるような感じではたぶんなくてっ」
「なぎちゃん、焦りすぎて怪しすぎ」
「なぎさ先生、バレないように気を付けてね」
「だわわわわゎゎゎ……」
顔から火を噴きそう。
わたしはカウンターに突っ伏した。
隣で頼利さんは笑っている。
この諸悪の根源め。