スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
俊くんが頼利さんに飲み物を尋ねて、頼利さんが烏龍茶と答える。
なぎちゃんは、と訊かれて、わたしは反射的に返した。
「シャンディガフのビール抜き」
「先生、あんた、やっぱ変わってるな。要するに、ジンジャーエールだろ。何でそういう無駄に凝った注文するんだ?」
「父に教わったんです。うちの父、若いころからカクテル大好きで、その趣味を活かして、飲料会社でヒット連発したことがあって、今、けっこう偉い人なんです」
「ほう。親子でおもしれえってわけか。人とは違う、無駄に凝ったアレンジをしたがるやつは、おれは好きだぜ。ジャズに通じるものがあるからな」
「それはどーも」
10年以上前の記憶がふと脳裏をよぎった。
加納と初めてしゃべったのは、複数の大学をまたいで構成されるボランティアサークルの新人コンパの席だった。
その席でも、わたしは父に仕込まれた方法で、ソフトドリンクを注文した。
加納はわたしの注文の仕方に興味を持った。
あのときは父のユーモアを誉めてもらったように勘違いしたけど、後になって考えてみたら、別の側面が見えてくる。
加納は父の勤める企業名と役職に反応したんじゃないか、と。