スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
☆.。.:*・゜
熱に浮かされたような興奮の中で、ひたひたと、少しずつ、現実が戻ってくる。
「よう、先生、どうだった?」
声を掛けられて、息をついて、呆けたまま吐き出した言葉は、どうしようもなく稚拙だった。
「すごかったです」
異次元だった。
こんなに目の前で、凄まじく高い技術で、まともに聴いたことのない大人数でのジャズという音楽が演奏された。
わたしはただ、呑み込まれるしかなかった。
耳から入る情報だけじゃなく、おなかに響く重低音の振動をひっくるめても足りなくて、音楽そのものが熱を発していたことを、わたしは体感した。
どう表現すればいいか、よくわからない。
言葉じゃ追い付かないくらいの情報量に、その情熱の膨大さに、わたしの中がまっさらになってしまった。
でも、空っぽというのとは違っていて、すごくとても満たされている。
演奏が終わって、手が痛くなるほど拍手をした。
歓声と指笛の飛び交う中、ライヴの初めにもマイクを取っていたトロンボーン奏者が再びマイクを手に英語で話をして、唐突にこっちを見た。
わたしと同じテーブルに着く、例のイケメンを呼んだんだ。
「ライリ!」
こっちに来い、と手招きされたイケメンが立ち上がって、気負う様子もなくステージに上がった。
彼は、メンバーひとりひとりの名前を紹介して、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラがニューヨークからやって来たことを聴衆に告げた。