スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
美香子先生が積極的だ。
いつもの笑顔にいつもの口調だから、俊くんもついうっかり、普通にうなずいてしまってる。
なるほどね。
こんなふうにして、年下男子はおねえさまに絡め取られていくわけか。
昨日は俊くんのうじうじが心配だったけど、この2人、案外あっさりくっついちゃったりしてね。
美香子先生、頑張れ。
わたしと同じタイミングで食べ始めた頼利さんが、ふぅっと満足そうな息をついた。
よっぽどおなか減ってたのか、もう食べ終わってる。
空腹モードのわたしより早食いって、男の人でも意外と少ないんだけど。
ほら、わたし、給食で鍛えられてるから。
頼利さんはわたしの視線に気付いて、ニヤッと笑ってみせた。
「あんたも体感したからわかるだろうが、おれのほうが圧倒的に激しく動くから、消費するんだよ」
「まあ、確かに」
ドラムって、右手と左手が動くのはもちろんのこと、右足はバスドラムを叩くペダルを踏んでるし、左足はハイハットシンバルを開閉するペダルを踏んでるし、
手足がバラバラにならないように体幹の筋肉を緊張させてなきゃいけない。
すごく疲れるらしい。
と、まじめにスタジオでのセッションのことを思い出したわたしのそばで、俊くんと美香子先生がピクッと固まった。
え、何?
俊くんは耳まで赤くなって、あらぬ方角を向いた。
美香子先生がわたしに耳打ちした。