スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
「なぎさ、好きだ」
思うに、頼利さんはスパルタである。
怒鳴ったりするわけじゃないんだけど、レッスンのスピードに容赦がない。
「コード、全部覚えてきたか?」
覚えてて当然、みたいなニュアンスで訊いてくる。
ちょっと自信ないです、とは言いづらい。
わたしは必死でついて行くしかない。
コードというのは和音の種類のことで、同じドを基準にする和音だけでも、かなりの数がある。
今までクラシック音楽的なハ長調やハ短調で楽譜を読んできたわたしは、これをCメジャーやCマイナーと覚え直して、さらにその派生形を山ほど覚えることになった。
ジャズの楽譜には、おおよそ小節ごとにコードが指定されている。
つまり、その小節が持つべき響きが指定されてるわけで、もっと言えば、その小節がどんな表情をしてるかが書かれているわけ。
コードという合言葉によって、同じ楽譜を共有するバンドは、同じ表情の響きを鳴らしながら、ひとつの曲を形にしていく。
だから、コードを読んで曲の感情の機微を理解できることが、バンドで演奏する場合の大事な第1歩なんだ。
ということで、覚えましたとも。
ドを基準とするCのコードの、メジャーとマイナーとセブンとメジャーセブンとマイナーセブンとディミニッシュとオーグメントとサスフォーから始まって、黒鍵含めて12音ぶん。