スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
頼利さんが、わたしの手の中にあるグラスを、そっと奪った。
ふたりきり、クローズしたお店の奥の、楽器に囲まれた薄暗がり。
わたしを見つめる頼利さんの目が、静かに熱くきらめいている。
「なぎさ」
低い声が、甘い。
胸がドキドキし始める。
恋が動き出す。
かわいい教え子がつないでくれた縁は、今日からは、後ろめたい肩書に縛られない。
頼利さんの手が、わたしの肩に触れる。
触れられたところから淡い熱が広がって、全身がふわふわに痺れていく。
その頼りない体を、頼利さんの腕が優しく抱き留めた。
わたしは頼利さんに身を預けて、きれいな切れ長の目を見上げた。
コロンの匂い、汗の匂い、肌の匂い。
いつの間にか、わたしは頼利さんの匂いを覚えている。
頼利さんの厚い胸からも、ドキドキのリズムが聞こえてくる。
わたしと同じで、熱くて速い。