スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


オーケストラのメンバーはみんな日本のことが好きなんだって。

リーダーであるトロンボーン奏者は特に、日本食のファンなんだって。

そういうちょっとしたエピソードが語られて、聴衆がまた喜んで、アンコールなしでライヴは終了した。


ステージの上には楽器の半数が残されたまま、メンバーだけがカーテンの向こうに引っ込んだ。

とはいえ、聴衆に声を掛けられた人はステージから降りてきて、しゃべったり写真撮影に応じたりしている。


リーダーさん、人気だ。

笑顔が気さくで、話しやすそうだしね。

何より、ドラムの貴公子、さすがというべきかファンに囲まれてる。

握手を交わす仕草がまた、上品で美しい。


わたしはオレンジジュースを口に含んだ。

氷が溶けてしまったせいで、すっかりぬるく、薄くなっている。

テーブルの向かい側で、らみちゃんが人形と化している。

ポーッとして、目を開けたままの夢見心地。


と、わたしの目の前で大きな手が振られた。

視線を上げると、ライリというらしいイケメンが、呆れ顔をしている。


「吹っ飛んでねぇか?」


「え? あ、だ、大丈夫です」


「ビッグバンドのジャズを聴いたのは初めてか?」


「初めてです」


「衝撃的だったろ?」


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